漢方ブログ

#14 「陰性だから大丈夫」と思っていませんか?

数字の奥にある”体の声”を聴くということ

健康診断の季節になると、毎年のように同じ会話を耳にします。

「血液検査は異常なし」「尿検査はマイナスだったから安心」——。

その”安心”の裏で、体が小さなサインを出しているかもしれない。そんなこと、考えたことはありますか?

尿は、体の中で起きていることを静かに教えてくれる、鏡のような存在だと私は思っています。血液検査よりも早く、”未病”のサインを映し出してくれることがあるのです。

「陰性=安全」ではない、という話

健診票に並ぶ「尿タンパク(-)」という文字。その一行に、ほっと胸をなで下ろした経験がある方も多いのではないでしょうか。

でも実は、この定性検査でわかるのはアルブミンというタンパクだけ。もう一つのグロブリンというタンパクが増えていても、数値には現れないことがあります。

つまり、結果が「陰性」でも、体の中では何かが変わり始めているかもしれない。数字は白黒をつけるためのものではなく、「体からのメッセージ」なんです。

ストレスでも変わる、体の反応

「尿タンパクが出た」と聞くと不安になりますよね。でも、病気でなくても陽性になることがあります。

たとえば、強いストレスや発熱、激しい運動のあと。これは、体がストレスホルモンに反応しているサインのひとつです。

ホースの先をつまむと水圧が上がるように、腎臓の血流にも一時的な圧力がかかり、タンパクが漏れ出してしまうことがあるんですね。体は常に、外からの刺激に一生懸命反応してくれているのです。

不調のサインは、決して”悪いこと”ではありません。むしろ体が、しっかり働いてくれている証でもあると、私はいつも感じています。

「菌が出た=感染」ではないこともある

尿路感染症で「菌が出ている」と言われたとき、それだけで不安になる方も多いでしょう。

でも、採尿の最初の部分には、尿道の入り口にいる常在菌が混じることがあります。感染していなくても菌が検出されることがあるんです。

そこで大切になるのが、尿中の白血球。体が炎症に反応しているときには、白血球が現場に駆けつけます。だからこそ、「白血球が陰性」であるか、まずは落ち着いてよく見てみましょう。

「体がどう反応しているか」を見ることが、”読み方”のポイントだと思います。

漢方でいう「未病」は、数字の前に現れる

漢方では、体がバランスを崩し始めた”未病”の段階で気づくことをとても大切にしています。

気(エネルギー)・血(栄養)・水(めぐり)のどこかが滞ると、その影響はまず尿や舌、肌の色といった”外に出るサイン”に現れてきます。

尿のpHが酸性に傾きすぎているとき、それは糖代謝や血流のバランスが乱れているサインかもしれません。

反対に、アルカリ性に傾いているときは、菌が繁殖しやすい環境や、冷えが背景にあることも少なくありません。

どちらも「病気」ではなく、「体が何かを伝えようとしている」状態。そこに耳を傾けることが、未病ケアの第一歩です。

「数値を読む」から、「体と対話する」へ

健診の数字は、あなたを評価するためのものではありません。体が発している”問いかけ”を、どう受け取るかが大切なんだと思います。

千幸堂では、健診票を一緒に見ながら、「この数値はこういうことかもしれませんね」「ここを少し整えてみましょうか」と、体と対話するように読み解いています。

数値の奥にある”体の声”を聴くと、不安は安心へ、そして自分なりの行動へと変わっていく。そんな瞬間に立ち会うのが、私はとても好きです。

「大丈夫」の前に、少しだけ立ち止まろう

「陰性だから安心」——その瞬間、私たちは体の声を聞き逃しているかもしれません。

健診の紙を閉じる前に、少しだけ立ち止まって、体の声に耳を傾けてみてください。

千幸堂は、その”声”を一緒に翻訳する場所でありたいと願っています。

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