ストレス社会ともいわれる現代、日常のさまざまな要因によるストレスから自律神経失調症を発症し、心身の不調に悩む人は少なくありません。不調を感じても我慢してしまう人もいますが、放置すると症状が悪化してしまう恐れがあるため注意が必要です。そこで、この記事では、自律神経失調症の症状を緩和させたい場合に効果が期待できる漢方の使用について、自律神経失調症の症状や各症状におすすめの漢方とあわせて解説します。
自律神経失調症について千幸堂の3つのアプローチ
自律神経が失調して、急激に血圧が上がったり激しい動悸がはじまったり、不眠が続いたりした場合は、心臓に負担がかかったりしますので、西洋薬で即効的に対処するべきだと思います。
しかし、それは一時しのぎになってしまいます。この症状があらわれている本当の理由は、気力がなくなっていたり、ホルモンバランスが崩れていたり(更年期障害など)ストレスの連続で神経が弱っていたりなど様々です。
それをすべて、安定剤で抑えているのでは解決にならないのではと考えています。
- 気力の無い方には、養生と補気作用のある漢方を
- ホルモンバランスの崩れておられる方には、血の道の漢方を
- ストレスに弱い方には、抗ストレス作用のある生薬を含んだ漢方を
おすすめし、人生の中での辛い時期を乗り切って頂きたいと思っております。
自律神経失調症の不快症状に漢方の使用を勧める理由
漢方を用いる東洋医学や漢方医学では、人の身体が正常に働いているのは3要素のバランスが保たれているからであるという考えが基本です。3要素とは、実体のない「気」、実体のある「血」、血液を除く体液を示す「水」を指します。漢方医学では心身の統一を「気」という概念で認識し、自律神経失調症は「気」のエネルギーが衰え身体のバランスが保てなくなっている状態です。
「気」はあらゆるものを構成する最小単位の物質で、これを含めた万物の生成の変化を理論的に説いているのが「陰陽五行論」です。東洋医学で診断や治療のベースとなったり東洋思想のポイントとなったりしています。陰陽五行論は宇宙にあるすべてのものは陰と陽、五行に分けられるという理論で、陽は交感神経、陰は副交感神経を意味し、五行は木、火、土、金、水のことです。具体的には、木が肝(自律神経、末梢神経系)、火が心(循環器、脳神経系)、土は脾(消化器系)を指します。また、金は肺(呼吸、免疫系)、水は腎(生殖器、ホルモン系)です。漢方では、これらが互いに関わり合い、コントロールし合っていると考えられています。
自律神経とは何?
自律神経失調症は名前の通り自律神経の調子を失う症状ですが、そもそも自律神経とはどのようなものなのでしょうか。人の体内にはさまざまな神経が通っていて、その働きにより大きく「中枢神経」と「末梢神経」に分類されます。中枢神経は脳と脊髄により構成されているもので体の各部に指令を出すことが役割です。一方、末梢神経は体の各所に伸びて情報を伝達する役割を持つ神経で、さらに、「体性神経」と「自律神経」に分類されます。体性神経と自律神経の違いは自分の意思で動かせるかどうかです。体性神経は自分が思う通りに動かせますが、自律神経は自分の意思や意識の通りに動きません。例えば、暑くて汗をかいたとき、汗が出ることは自律神経の働きで、涼もうと手で仰ごうとする行為は体性神経による動きです。
このように自分が思うようにコントロールできない自律神経ですが、生命を維持するために欠かせない体の働きのバランス調整を行う役割を持っているため、健康な生活には正しく働くことが必需です。生命維持に欠かせない働きとは、脈拍や呼吸、内臓の働き、ホルモンの分泌などを指します。また、自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類の神経があり、心身が健康な状態でいられるのは、この2種類の神経がその時々に応じて自然な切り替えを行いながらバランスを保って働いているからです。交感神経のほうが優位に働くと心身の活動が活発になり、副交感神経が優位に働くと心身の緊張が解けます。そのため、活動する日中は交感神経が、睡眠を取る夜間は副交感神経が優位に働くのが理想です。
自律神経失調症とは?
生命を維持するために欠かせない心身の活動が正常に保たれているのは、自律神経である交感神経と副交感神経が無意識のうちに切り替わりバランスよく働いているからです。ストレスなどを受けると、交感神経と副交感神経が正しく切り替わらず、自律神経のバランスが崩れて、心身活動が正常に行われなくなる場合があります。これが、自律神経失調症です。交感神経が身体を活発に動かしたいときに働かず、身体を休めたいときに活発化して興奮状態となり、休みたいときに休まらない生活が続くと心身に不調が生じます。
自律神経のバランスを崩す原因となるストレスの内容は人それぞれです。自律神経の働きが乱れることで生じる症状の種類も多種あります。例えば、症状は、全身に出る人もいれば、局所的に出たり精神的な症状として現れたりする人もいてさまざまです。また、複数の症状が重なる場合もあれば、明確な症状は見られず何となく感じる不快感や調子の悪さだけが続くケースもあります。さらに、他の病気でも現れる頭痛やめまい、下痢といった症状が出ることも多く、自律神経失調症の発症をなかなか自覚できない場合も少なくありません。イライラしたり不安を覚えたりする症状が出ても、病気ではなく性格が起因しているものと判断し放置してしまう人もいます。
自律神経失調症の代表的な症状
自律神経失調症の症状は、大きく、全身的症状、局所的症状、精神的症状の3つに分類されます。全身的症状として現れるのは、疲労感や倦怠感、めまい、ふらつきです。さらに、頭や顔などが異常に熱く感じるのぼせや体に熱感を感じるほてり、冷えや多汗なども生じます。一方、局所的症状で発症するのは、頭痛や耳鳴り、動悸、関節の痛みや肩こり、手足のしびれです。便秘や下痢、口や喉の不快感、頻尿や残尿感、生理不順などの症状が現れることもあります。対して、精神的症状で見られることが多いのが、イライラや不安、不眠、抗うつです。激しい感情の起伏や無気力な状態、記憶力や集中力の低下なども多く見られます。実際に現れる症状が1つであるか複数重なるかは個人差があり、出る症状や症状の強弱も人によってさまざまです。
自律神経失調症には不快に感じる多様な症状がありますが、その改善策として漢方の使用がおすすめです。現代医学といわれる西洋医学では、明確に原因とわかっている物質や病的変化が見られる箇所を取り除く治療を行います。対して、東洋医学や漢方医学は、漢方を利用しながら身体の自然治癒力を高め、不調が起こらないようにする治療です。漢方は身体のバランスの状態を正常に整えるための薬であるため、原因が不明確な病気の治療にも対応でき、自律神経失調症の改善に向けた使用への効果にも期待が持てます。
自律神経失調症の4つのタイプとおすすめの漢方
ここでは、自律神経失調症は4つのタイプの症状と各タイプにおすすめの漢方について解説します。
心血鬱結タイプ
気を外に発散できず血の流れが滞っている状態です。このような状態になると、やる気や意欲がなくなる無気力症状が出たり、ストレスなどにより脳が正常に働かなくなるうつ状態になったりすることがあります。また、人と会ったり話をしたりすることを避けたがるのもこのタイプに見られる症状の1つです。悪化すると、家などに閉じこもってしまったり、不登校や出社拒否を引き起こしたりする場合もあります。このような症状に対するおすすめの漢方は、加味帰脾湯や抑肝散加陳皮半夏、加味逍遙散です。
肝気鬱結タイプ
ストレスによって肝の伸びやかさが衰えて働きが鈍り、全身の気や血液の流れが停滞している状態です。気分の落ち込みや、体のあらゆる筋肉の緊張などの症状が見られます。また、筋肉が緊張して収縮することにより、肩こりや腰痛、胸部への圧迫感、そのほか、緊張性便秘、胃の収縮による食欲不振などが発症するケースも少なくありません。このタイプには、四逆散や柴胡疎肝湯、加味逍遙散などの漢方が適しています。
心脾両虚タイプ
ストレスが原因で脾の働きが悪くなくなり、五臓六腑が正常に動かなくなっている状態です。東洋医学では、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、脾臓を示す「五臓」と胃、小腸、大腸、膀胱、胆嚢、三焦を指す「六腑」を合わせて「五臓六腑」といいます。このタイプで多く見られる症状は、食欲不振や不眠、全身に覚える疲労感、気力不足や不安感です。漢方では、帰脾湯や人参養栄湯などの使用が適しています。
心腎不交タイプ
腎虚の症状とともにほてりなどの熱証も現れる腎陰虚や腎水の不足により、自分で熱を制御できなくなっている状態です。火が激しく燃えているように感情が高まり、イライラしたり怒りっぽくなったりするほか、ほてりやのぼせ、動悸、不眠、耳鳴り、足腰にだるさを生じたりもします。このタイプにおすすめの漢方が黄連阿膠湯などです。
漢方についての理解を深め、心身ともに健康な状態を目指してみましょう。
自律神経失調症は現れる症状も原因も人によってさまざまです。また、漢方の種類はたくさんあります。そのため、自分にあう漢方を正しく選ぶことは簡単ではありません。症状の改善を目指すためには、まず自分に適した漢方を選ぶことが大切です。自分の症状や原因にあった漢方を選びたいなら、陰陽五行の考え方を熟知し、漢方の知識をしっかり持った漢方薬局に選んでもらうとよいでしょう。
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